気付けば、と・・・・・・そして、サッカー部のヤツらと一緒に部活へ向かうことが習慣になっていた。
は遠慮したみたいだけど、どうせ行く方向は同じなのだからと、周りのヤツらが誘い、このメンバーで行くことになった。・・・・・・って言うか、お前らが気を遣えよ。
そりゃ、いつでもといるなんてことは無理だし、オレもそこまで束縛する気はねェよ。でも、だからこそ、一緒にいられる機会は大切にしたい。
とは言え、も楽しそうだから、オレも何も言えねェけど。それに、とりあえず今のところ、帰りは2人なわけだし、許しといてやる。
「あ。前にいるの、天谷君と及川君じゃない?」
「そうだな。」
「私も挨拶していいかな?」
「・・・・・・どっちでもいいんじゃねェか。」
「じゃあ、してみようっと。・・・・・・天谷君、及川君!初めまして、それと、部活頑張ってね。」
が声をかけると、2人が振り返り、吏人は相変わらずの無表情、及川は少し驚いた顔をしている。それに対して、は笑顔のままだ。
また人数が増えた、とか残念に思ってんのはオレだけみたいだな、。
「え〜っと・・・・・・、は、初めまして。応援、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。と言うか、オレに関しては、初めましてじゃないッスよね、さん?」
「え?覚えててくれてるの?」
「はい。あのあと、佐治さんにさんとの会話をいろいろと聞かれたので、印象に残ってました。」
「雪哉に・・・・・・?」
「オイ、佐治ー?何聞いたんだよー。ってか、嫉妬ー??」
「テメェらが聞けって言うから、聞いたときの話だろーが!!」
「そういえば、私も聞かれたっけ。でも、あのときはお互い、そういう感じじゃなかったもんね?」
「あ、ああ・・・・・・。そうだったな。」
「そうですか?オレには、そのときから2人とも本気のように見えましたけど。」
オレもそうだったが、も驚いた顔で、吏人を見つめ返した。
「そうなの?・・・・・・って、自分のことを天谷君に聞くのは変だよね。」
「いえ。正直、2人とも鈍そうだとは思っていたので。」
「よくわかってくれてるね、天谷君!」
は嬉しそうに答えてるけど・・・・・・。それでいいのかよ?!
オレはと違い、少しムッとした表情で、吏人から視線を逸らした。
「でも、今までの会話を聞いてると、どうやら進展はあったみたいですね。」
「そうだね。鈍い割に、今ではちゃんと付き合ってます。」
「それはおめでとうございます。」
「ありがとう。天谷君のおかげだよ?」
「オレは何もしてないッスよ。」
「ううん。天谷君が来てくれたから、私たち話すきっかけができたんだもん。だから、天谷君のおかげだよ。」
「それは違うッス。オレが来ていても、やるのかやらないかはアンタたち次第だ。」
「ありがとう。天谷君のそういうところ、いいと思う。」
などと楽しそうに話している2人を見て、あまり良い気はしない。と思っていたら、吏人が視界から消えた。・・・・・・飛ばされた?!
「ダメー!!吏人君を誘惑しないで!」
「あれ、マネージャーの蘭原さん?」
「なんで知ってるんですかっ?」
「そりゃ、知ってるよ。」
「柚絵さん、その人、佐治さんの彼女ッスよ。」
飛ばされた吏人が戻って来て、そう言った。
自分でもなかなか言いにくいが、人からを自分の彼女だと言われると、妙に照れくさく、それと同時に、嬉しくも思ってしまう。
「初めまして、蘭原さん。雪哉のクラスメイトで、雪哉の彼女でもある、です。いつも雪哉がお世話になってます。」
だから、にそんなことを言われると、余計に照れる。
「こ、こちらこそ!吏人君がお世話になってますっ!!」
おそらく、の発言が羨ましく、そう言い返しただけだろうが、はどうやら気付いてないらしく、真面目に返してる。
そんなんだから、吏人に鈍いとか言われんだよ。・・・・・・オレも人のことは言えないみたいだが。
「いやいや。天谷君もキャプテンだからね。天谷君にも、こっちの方がお世話になってると思うよ。」
「そんなことは・・・・・・っ!」
「ふふ。蘭原さんって優しいんだね。それに、マネージャーとしても優秀なんて、きっと良いお嫁さんになるよ。」
「本当ですか?!」
「うん!私はそう思う。」
それから、2人は意気投合したのか、すぐに仲良くなっていった。正直、他の連中と仲良くなるより、同性同士で仲良くなってくれんのは、オレとしても助かる。
そして、その日の部活終わりには、がマネージャー業を少し手伝うほどになっていた。
「あれ?あそこにいるのって・・・・・・。」
「だな。」
オレたちが着替え終わると、楽しそうに話しながら後片付けをする2人の姿が見えた。
もう片付ける物がほとんどない状態で、つい話す方に夢中になっているらしい。
「蘭原さんは、天谷君のどういうところが好きなの?」
「まず、頑張ってる姿を見ると、支えたい!って思うんですよね。」
「なるほどね。」
「あと、天使っぽくてカッコイイなって思って・・・・・・。」
「天使かー!」
「それから、ハトっぽいところも可愛いな、って。」
「ハト?!」
笑いながら賑やかに話している2人。
「ガールズトークだ・・・・・・!!」
そんな2人を見て、誰かがそんなことを言ったが・・・・・・。あれはガールズトークなのか?途中、ハトとか言ってたけど・・・・・・。
でも、オレら野郎が入りにくい空気であることは確かだ。
「さんは、どういうところが好きなんですか?」
「私?」
しかも、そんな会話が始まろうとしており、余計に入りづらくなった。
だが、周りのヤツらがニヤニヤとオレを見始めたから、止めに入るべきだとも思う。・・・・・・でも、オレも少し聞きたいとも思う。
どうするべきなんだ・・・・・・!と悩んでいる内に、が答え始めた。
「私も似たような感じかな。まず、頑張ってるところを見ていて、支えたいって思うの。」
「一緒ですね!」
「うん!あと、優しくて、みんなにも信頼されてて、そういうところがカッコイイなって思う。」
「可愛いとは思わないんですか?」
「可愛いと思うときもあるよ。この間も・・・・・・って、これは内緒。」
「えー!教えてくださいー。」
「ダメ。雪哉の可愛い一面は、私だけが知っていたいの。」
表情までは見えないが、は嬉しそうな声で話している。それを聞いて、周りのヤツらがオレをからかい、その騒ぎに気付いたがこちらを振り返った。
「あ、ゴメン、雪哉。もう少しで終わるから。」
「ああ・・・・・・。」
どうやら、自分たちの話がオレらに聞こえていたとは思っていないらしい。は何も気にしていない様子で、そう言った。でも、聞いてしまったこっちとしては、すげぇ気になる。
「佐治ー。どこが可愛いのか、ちゃんと聞いとけよー?」
いつもなら、少し邪魔をしてから帰るこいつらも、ムカツク顔でそんなことを言いながら帰って行った。・・・・・・まあ、邪魔にならねェからいいか。オレだって、それは聞きてーし。
「お待たせ。・・・・・・あれ?みんなは先に帰ったの?」
「あいつらにも待っててほしかったのか?」
「と言うより、それだけ雪哉を待たせたのかと思って・・・・・・。ゴメンね?」
「謝る必要はねェよ。こっちこそ、マネージャーでもないに、オレらの片付けを手伝わせちまって悪かったな。」
「ううん。私は、少しでも役に立てて嬉しかったよ?」
オレが情けなく嫉妬しても、申し訳なく言っても、は健気にそう返しただけだった。・・・・・・オレは、のそういうところも好きだけど、少し心配にもなる。お人好しっつーか、何つーか・・・・・・。誰かに利用されたりすんなよ?
でも、それはオレが守ってやればいいとして。今は、それ以上に気になることがある。
「そういえば、さっきオレのことを支えたいとか言ってたよな?」
「え?!も、もしかして・・・・・・、蘭原さんとの会話、聞こえてたの?」
「はっきりと。」
「ウソー・・・・・・!!」
明らかに動揺し出したに、オレはさらに問い詰める。
本当は、ただ聞きたいだけなんだが、の反応が面白くて、少し責めるような口調で言った。
「あと、オレのことを可愛いとか言ってたよな・・・・・・?」
「う・・・・・・。」
「ちゃんと説明してもらおうか・・・・・・?」
「・・・・・・お、怒らない?」
「怒られるようなことなのか?」
「う〜ん・・・・・・、違うと思うけど・・・・・・。」
「どっちにしろ、説明はしてもらう。」
「はい・・・・・・。」
そうやって、弱々しい声で答える姿も可愛すぎんだよ。だから、つい、からかいたくもなる。
「あのね、この間、髪は伸ばしてるの?って聞いたとき、あったじゃない?」
「そういや、あったな・・・・・・。」
「それで、雪哉は短いのは似合わないから、って言ってたでしょ?」
「ああ。・・・・・・それで?」
「雪哉でも、そんなこと気にするんだ、と思ったら可愛くって・・・・・・!」
「?」
「だって、雪哉はすごくカッコイイし、前みたいに短くても、今みたいに長くても、どっちだって似合ってるのに、雪哉自身はそんなこと考えてたんだ、なんて思うと、もう可愛くって・・・・・・!!」
今、目の前に、その本人がいるということを忘れたのか、は興奮気味に語っている。
・・・・・・意味わかんねェよ。とにかく、ものすごく恥ずかしいことを言われてることはわかった。
でも、恥ずかしさより呆れが先に来て、オレは思わずふき出してしまった。
「くくっ・・・・・・!何言ってんだよ。」
「え、え?何?なんで笑うの?」
そうやって、不思議そうにしている姿も・・・・・・。
「本人がここにいる、って忘れてねェ?」
「え?!えっと・・・・・・、忘れてた、わけじゃない、けど・・・・・・。」
我に返ってきたのか、少しずつ恥ずかしそうにしていく姿も・・・・・・。
「絶対、の方が可愛いだろ。」
「・・・・・・!!」
その照れた表情も、何もかも。の方が可愛いに決まってる。
「だから、にオレのことを可愛いなんて言う資格はねェよ。」
「か、関係ないよ!可愛いって思ったんだから、可愛いって言ったっていいでしょ?!」
「その理屈からいくと、オレはずっとに可愛いって言い続けなきゃならねェな。」
「い、言わなくていいの!!」
「・・・・・・そうだな、だってオレに聞かれなきゃ、言わなかっただろうし。」
「そういう問題じゃないけど・・・・・・。」
照れながらも、明らかに困っている様子のを見て、オレも少しやりすぎたか、と反省した。
でも、さっきの部活での会話も含めると、さっきからオレはに褒められまくりで、気分が上がりまくってる。そりゃ、調子に乗っちまうのも仕方ねェだろ。
「悪い、少しからかいすぎた。」
「からかい、って・・・・・・。もう、雪哉!」
「だから、悪かったって。でも、だってオレのこと、褒めすぎだっただろ。もちろん、オレはを褒めすぎた、なんて思ってねェけど。」
「私だってそうだよ。雪哉は、雪哉が思ってるより、もっと素敵な人なんだよ?」
オレを諭すように、でも笑顔で、はそんなことを言った。
・・・・・・ったく、本当、お前には敵わねーよ。
「わかったよ。・・・・・・でも、やっぱり、可愛いは止めてくれ。男として、そこは素直に喜べねェ。」
「褒め言葉だよ?」
「そうだとしても、だ。何か、他の言い方はねェのかよ。」
「他、か・・・・・・。じゃあ・・・・・・、わかった。」
「ん?」
「私は、雪哉のそういうところが好きだよ?」
意を決したように、照れながらも満面の笑みで、はそう言った。
お前、自覚ねェのか・・・・・・?!!
「・・・・・・それでいい。けど!そういう言葉は、何回も言うもんじゃねーから、たまに、にしとけよ。」
「わかった。」
嬉しそうなの表情を見て、オレは思った。要は、やっぱりオレも、のことが好きなだけなんだ、って。
そんな大好きなが言ってくれてるんだし、オレも少しぐらいは自分のことを認めてやってもいいか、と思えるようになった。
ありがとな、。オレものことが好きだ。・・・・・・って、オレもたまに、しか言わねェからな!
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今回書きたかったのは、市帝メンバーの「ガールズトーク」発言と、佐治さんの髪型について。賑やかにしている市帝って、本当楽しくて好きです。マジで、逆ハー頑張ろうかな・・・。
あと、“賑やか”で言うと、蘭原さんが天谷君を飛ばすシーンも書きたかった!原作でもありましたが、あの1コマ大好きなんです(笑)。
そして、佐治さんの「短髪は似合わない」発言。これ、コミックの1巻で佐治さんのプロフィールに書いてあったわけですけど・・・。もう、それを読んだ瞬間、キュンキュンしまくったのは言うまでもありません!!短髪も似合ってるよ!でも、個人的には長髪が好きだよ!!とかね!(落ち着け)
そんな思いの丈をぶつけてみました(笑)。本当、佐治さんが愛しすぎる。マジで、帝デッキを構築してやろうかしら。
('11/06/23)